
「毎日9時間、製作に没頭した。チェロを
削るのは体力の限界に挑戦するのと同じで、
夕方には倒れ込んでしまうほどでした。根
を詰めて体を壊したこともあった。でも製
作をやめようと思ったことはなかった。
努力した分だけそれが作品に現れる。形や
寸法だけではない何かが音に現れる気がす
る。楽器製作に巡り合えた運命に感謝してい
る。」と語る。
楽器製作で心がけていることは?とお聞き
すると、「私の人生のモットーはチャレンジ
。新しいモデルの依頼があると嬉しいのです。
製作モデルはデルジェスが基本で、今までイザイ、ビュータン、コバンスキー
を作ったが、次はハイフェッツモデルを製作する予定です。それぞれのモデル
とペグ、テールピースの材質との相性も調べてみたい」と熱く語られた。
VSJに期待することは?とお聞きすると。「心中したいくらい好意を持って
います。会員の皆様にも随分お世話になりました。まず小林陽一さん、今使って
いる図面や資料はほとんど彼からもらいました。久我一夫さんにもいろいろ教わ
り、富川 智さんの福島の工房には泊りがけでお邪魔し、いかに美しく仕上げる
かを教わりました。石井健夫さんの教室には何度も通い、その結果は音質にも
変化があったと感謝しています。生命ある限り製作していきますので、皆様よ
ろしくお願いします。
佐上さんは現在81歳、今までに作ったバイオリンは50数台、ビオラ17台
チェロ5台。これら佐上作品による室内楽が大阪と東京で開催され大きな反響
を呼んだ。作品は庄司紗矢香さん、細谷真理さん、芸大生などに愛用されている。