会員による寄稿

バイオリン製作に関する寄稿を掲載しています。
各会員が日々の製作から発展させた見解や知見などを記事としています。
なお著作権は著者に帰しますので転載はご遠慮いただきます。
また各記事はあくまでも会員個人の見解であり、研究会としての統一見解を表明するものではありませんことをご理解ください。
 会員の方へ
成功・失敗経験談 加工技術 製作姿勢 こだわり 手作り部品・工具の紹介など幅広く求めています。
きっと共感を得る楽しい会話が出来ると思います。
 小嶋までお寄せ下さい。
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バイオリン製作ノート(その1)-2

小嶋正三  

内型の作成
 型の材料は音楽院では、愛知木材から購入したものだったが、会社のHPを見てもなかった。いろいろ探したら、篠崎バイオリン工房でイタリアからの合板を販売していた。製作直前に注文しようとしたら、イタリアで加工しているところが辞めてしまっていた。探しているがいつになるか不明とのこと。
 それで東急ハンズで適当な厚みの合板がないか聞いてみると、厚さ12mm、15mmのものがあるということで、15mmのものを購入した。
製作バイオリンはAntonio Stradivariの「MILANOLLO」1728年モデルだったので、入手していたポスターより、その形状をトレーシングペーパーでトレースして製作にかかった。ポスターの寸法は製品なので、型は4mm短くした線を引き、板の上からピンでその線を押して板の上にトレースした。その後、本物の原寸写真と寸法写真を入手出来たので、比較すると縦の寸法が短かった。そのため、型を修正した。(下の写真ー横板付 参照)わかりにくいかもしれないが、上の線を木を接着している。型につけるブロック部寸法はオリジナル通りにした。なお、型にあいた穴は音楽院での型をまねて、ブロックをクランプで固定しやすいように、大きくした。
教訓ーSTRADは本物が残っているので、その写真で作成した方が良い。

横板作成
 横板は裏板の端材からではなく、専用の横板材料を購入していたので、それを使用した。厚さをストラディバリが使用している1mm狙いで、スタンレーのカンナで削り始めた。(3.14)
ここで、一つ問題が起きてきた。横板を削っていくうちに、所々に深く入り、厚さが薄い箇所が出てきた。場合によっては1mmを切る部位も出てきた。となるとその部位は使用出来ない。何度やってもダメなので、製作仲間に聞いてみた。その結果、大きなカンナで一気に削るか、刃先が櫛状のカンナで削る方法である。そういえば、音楽院のノートに今後買うべきものとして、櫛状のカンナの名前があった。それで小さい範囲を細かくカンナで削り、それを防いだ。この方法も教えてもらった。それで何とか必要な長さ分を確保した。

ブロックの作成
 ブロックの材質については、ストラディバリウスだけは柳の木を使用したことが知られている。それで以前、購入してあった柳のブロックをカットして、使用したが、これは(ストラディバリコピーを作るのであれば)失敗であった。
ストラディバリがなぜ柳を使用したのかは通常、使用する表板に比べて、極めてか軽く、工作しやすいためであった。しかし、日本の柳は比重が重く、逆であった。表板より比重が重いものだった。また、以前は柳で作った高級まな板をカットして使用したが、これはさらに比重の重いものだった。
 三苫由木子さんが講演会で、上部(ネックを入れる)の柳は硬いものを使用していると言っていたので、まな板の柳は上部で使用し、他は購入してあった柳を使用した。ちなみにグァルネリ・デス・ジェスは表板と同じマツの材質を使用している。(3.15)

バイオリン製作ノート(その1)

 小嶋正三

投稿の目的
 展示会に向けて、バイオリンを製作していると、いろいろな小さな壁や選択を迫られる。実は初心者がバイオリンを自分のみで製作することは難しい。最近はブログやYouTube 等で様々な方法が公開されているが、それを見ただけで製作すると途中で挫折する。
 なぜなら、肝心なところは秘密であったりするので、わからなくなると思う。また、特殊な工具を使わなければ、時間がものすごくかかったり、失敗したりする。また、細かい寸法がわからないとどの様に製作していいかわからない。また、製作順序があるので、飛ばすとうまくいかない。
 つくつく感じるのは、どこかの工程で手を抜くと後の工程でしっぺ返しを食らうということである。

内容
この製作ノートでは、ぶつかる小さな壁の乗り越え方や製作していることでの疑問(私が感じた)や発見をさらしていこうと思う。勿論、私なりの乗り換え方も書いてみようと思う。ある意味では自分の恥をさらすことになるが、ヒントを得る人や逆にアドバイスをしていただく人も現れるかも知れないと思う。なお、このレポートは不定期に継ぎ足しで書いていく予定であるので、興味ある人は定期的に会員からの寄稿をチェックしていただきたい。

プロフイール
 私の製作に関してのプロフィールを明らかにしておこう。バイオリンの演奏を習い始めたのは、50才からなのでそれ以降だと思うが、大阪の高槻市にあった岩井孝夫氏の工房「クレモナ」を何回か訪問している。そこで将来、製作にむけての板を何組か購入している。また、岩井さんの「バイオリン製作全集(全5巻)」も購入している。確か5万円近くしていたと記憶している。後に菊田浩さんも購入していたことを知り、なるほどと思った。また、第2回 日本バイオリン製作研究会の展示会にも行っていた。プログラムが残っていた。

 本格的に習い始めたのは、60才の定年退職後である。東京の代官山音楽院の日曜クラスに入学した。ちょうど高倉 匠主任講師が日曜クラスを担当する時期とピタリあった。名古屋からだったので、夜行のバスを利用したが、TOTALで
200万円近く費用がかかった。退職金のあかげである。私は製作に関して、
いろんな面で運がよかったと思う。日本バイオリン製作研究会で初めて、作品を発表して、そこで久我一夫さんと知り合い、いろいろ教えていただいた。第二の師ともいう人である。その翌年には久我さんは退会されているので、ぎりぎり間に合ったことになる。音楽は時間とともに変化するので、ある時点で止めて、その時、どのような周波数がどれくらい発生しているのか知るのは困難である。
ところが以前、属していた会社の先輩がそのソフトを開発していた。また、会社の弦楽合奏部でも一緒であった。高周波は分析できないが、ピアノの通常の範囲はわかる。また、TVでも紹介されているシャコンヌが名古屋が本社なので、窪田社長のうんちく講演会は長年にわたり、聴くことが出来た。(2020.3.11)

 

            

バイオリン製作するにあたっての型について

 小嶋正三                    

バイオリンを製作するにあたり、まず型を製作しなければならない。型には、内型と外型がある。この内型による製作方法は、イタリア出身でウルリッツァー社で活躍していたフェルナンド・サッコーニとその弟子によるフランチェスコ・ビソロッティによって復活された。ビソロッティと並び称されるジオバッタ・モラッシーは外型にによる製作が得意だったようだ。


パーフリングの製作

下田裕一

基本的に私は過去の歴史を紐解いたり、300年前の製法を~などとはあまり考えていません。逆に、今のような精密測定具等が無くてもあの製作レベルの楽器が作れたのだから、せめて見た目くらいは同等の物が作りたい、作れるはずと思っています。
今回のパーフリング製作も、先述のように特別の素材や道具がなくても作れるはずだとの信念から出来上がったレシピですので、
300年前にイタリアでストラディヴァリさん達がこうやって作っていたか?は解りません。


バイオリン作りの面白さ  <雑感>

前島隆生

17世紀中頃に形態が決まり、18世紀後半くらいまで幾多の名工が出現致しました。その時代の作品が現在オールド名器として大活躍している事はご存知の通りです。さて私たちはなぜバイオリン作りを続けているのでしょうか?


手作りのすすめ  <部品の製作>

前島隆生

手作りのテールピース(ヒルタイプ)
裏板用のメープルは美しい杢目を持っていますね。 端材でも立派な部品が作れますので、是非挑戦してみては如何でしょう。


表裏板材について

菅沼利夫

〜何故、比重が重要かと考えると、軽くて堅い材料を選ぶ時の基準になるからです。薄く削っていっても板鳴り(タップトーンの)音程が高い材料が、弦の圧力に耐えられる力がある木と言う意味と理解しています。表板は鳴りを作る板なのでしっかりした特性を持った材でないと、いくらがんばって作っても良い楽器にはなかなかなりません。〜