根本 和音さん

チェロ部門で、優勝(ゴールドメダル)を受賞されました。(日本人の優勝は39年
振り)オンラインでインタビューしましたので、紹介させていただきます。
●今回受賞したモデル:完全オリジナルです。大本たどると “ルジェリ” なんですけど、完全にあれは違うものになっているので、95%ぐらいオリジナルだと思います。箱の全長は755㎜なので普通だと思いますが、アッパーバウツとCの部分がだいぶおデブでお尻はそこまで広げ過ぎないというモデルです。ストラドモデルとはだいぶ違う形ですね。
響き:凄く表現が難しいんですけど、まあモデルをそうゆう風に作る利点というのは自分の思うような音を出すために改変して作る訳ですから、今回の楽器は特に音で勝ちに行くつもりだったので、そっちに重点が置かれてます。僕の楽器作りとしてのやりたいことが音響面ではそこそこ出来た楽器でした。
作品に対する審査員、演奏者、回りの方々からの評価:受賞した時は審査員と話す機会がほぼなくて、ビオラの製作家で2012年にトリエンナーレで優勝されたスイスの方が審査員にいらして、ウライクさんといいますが、その方は僕のニスの先生で、彼女からはメールで良かったんじゃないかなという評価をいただきました。あとは人づてに聞いた話では、これは本当かどうか判らないんですが、審査のとき僕の楽器を弾いてくださったチェリストの方がものすごく気に入ってくださって、最初に音の審査をしてくださったときにはこれがいいと言ってくださったというのは聞きました。
受賞後の変化:仕事量が増えた位ですかね。数年分は在庫があるにはあったんですが、その先がさらに増えた形です。あとは取材関係がかなり増えてチョットグロッキーになっています。あとは The Strad からも取材がありました。その他 “アルキマガジン?” に載せてもらったり、クレモナのローカルテレビとナショナルテレビ、新聞等々と取材がありました。
今後の抱負:製作としては今までと変わらず、奏者の方に喜んでいただけるような楽器を作り続けて行きたいです。どうしても楽器なので見た目の評価もやっぱり職人としてはそっちは大事なんですが、最終的にはどう頑張っても楽器なので、奏者の方に気に入っていただけるような楽器をひたすら自分なりに作り続けて行きたいなと思っています。あとはトリエンナーレだけじゃなくてもドイツミッテンバルトとか他の大きい世界コンクールにもまだ出していきたいなと思っています。
材料について(産地、密度他):産地の固定より僕はどっちかというと材料の良さを見ている形ではあるんですけど、今回のトリエンナーレの楽器は大雑把な計り方ではあるんですけど、密度は計っていて裏板に関しては時々計るぐらいで、今回のやつは表板はイタリア製でどこの業者から買ったかが判らないんですけど、30年ぐらい前の板で、密度が0.37だったかな。裏板は12年ぐらい前のモラッシーの裏板セットです。裏板を買ったのは2014年ぐらいで、トリエンナーレにチェロを出すというのはプロになる前からずーっと決めていて材料探しはずっとしてました。良いものが見つかったら自分のストックの中で更新していくというか、1セットこれはトリエンナーレ用にと買うじゃないですか。他の木材屋さんとか見ていてこれは良さそうと思うのがあったらそれと入れ替えるみたいな形をずっと続けていました。学校を卒業してからずっと探し続けていたんだけれど、同僚がトリエンナーレでゴールドメダルを取っているので彼の意見を聞きながら、表板だけ持っているものの中からこれで行こうかと思っているんだけど、というのをやはりこっちにしようかと1本選んで決めたものですね。
今回の受賞についての出品する前の自信:凄く変な話なんですけれど、元々優勝するつもりしかなかったというか、優勝するという目的で作って出したので、変な命令が同僚から出ていて、僕の兄弟子に当たる方も前回のトリエンナーレでチェロで優勝していて、同僚自身もトリエンナーレで優勝しているので、3回目行くぞということで優勝しようというので始めたんですよ。普段僕が同僚のアシスタントの仕事もしているんですけど、アシスタントの仕事はやらなくていいから自分のチェロに専念しろと言ってくれて時間を掛けることが出来たのがとても良かった。やはりそういう高いレベルのところで4年ぐらい働いていて自分の中の基準を引き上げてもらっていたので。
出す前に日本人の製作家の方同士で見せ合ったりしたか:菊田さん高橋さんには「チェロ出します。」というのはずっと言ってたんですけど、ギリギリだったので白木でお見せしたり出来上がってからお見せしたりは出来なかったです。友人たちにはバイオリンは間に合わないので「チェロ一本で行く」というのは言っていました。



一番左側が根本さんのチェロです。
高橋 明さん

高橋:まず、9月に開催されたクレモナのトリエンナーレ、チェロ部門で
優勝されたわけですけれど、私は残念ながら上位入賞は出来なかった
んですが、バイオリンでイタリアのALI賞ーイタリアバイオリン製作家
協会特別賞をいただきました。そのほぼ1ケ月後に開催されたイタリア
のピゾーニェで開催されたイタリア国際弦楽器製作コンクールにて
チェロのプロ部門で1位、同じくプロ部門のバイオリンで第2位を
受賞しました。
武内:高橋さん、最近音が良くなったんだけど、何か工夫されていますか?
高橋:特に変えてはいないんですけど、一つ考えられることは楽器を完成させ
た後、1ケ月から2ケ月くらい手元に置くようにしてその間に音ならしと
再調整をやってます。
武内:楽器の厚さの分布はどうされていますか?トップを厚くして同心円状に
していますか?
高橋:ほぼ同心円ですが、表板の魂柱部分だけ少し厚くしています。それ以外
は全く一緒、裏板はほぼ同心円です。表板の魂柱部分の直径20mm
ぐらいの部分を少し厚くしているだけです。それ以外は全く一緒です。
チェロの場合も同じです。
犬塚:高橋さんのチェロというのを拝見したことがないんですけど、チェロは
何作目ですか?
高橋:ほぼ2作目です。前回のチェロは2003年か4年ぐらいに作ったんでもう
17~8年経っていますね。
簗瀬:根本さんはチェロの場合、アーチを表板より裏板を高くした方が良いと
仰っていたんですが、バイオリンとはちょっと違いますよね。高橋さん
も今回の優勝されたチェロもそのように作っていらっしゃるんですか?
高橋:私はチェロもバイオリンも表板の方が1~2mm高いです。
簗瀬:何mmと何mmぐらいで作ってらっしゃいますか?
高橋:チェロは覚えていないです。バイオリンは裏板が15mm,表板が16mmです。
これは音響的な考えというより、板は駒が乗っていて弦の張力が上から
掛かるので初めに少し高めにしておいた方が良いと思うんです。裏板は
逆に魂柱で内側から押されるので年月が経つと膨らむ方向に行くのでは
かと、長年使っていれば弦の張力の力関係で同じくらいになるのでは
なるのではという考えから表板の方を少し高めになるようにしています。
簗瀬:ありがとうございました。
武内:裏板は古い方が響きがいいと思うんだけど、バイオリンとチェロの裏板
は何年物くらいの材を使っていますか?
高橋:資料があれば詳細が判るんですけど、今は判りません。大体でよければ
9~10年ちょっとぐらいですね。